HbA1cは、
何を表している数字なのか
健診の結果票で「HbA1c」という項目に印がついていた。血糖値とは別に、この数字は何を意味しているのか。数値が高いと言われたら、次に何をすればよいのか。この記事では、HbA1cの意味と診断基準、治療で目指す値、そしてHbA1cだけでは分からないことまでを整理します。
この記事の内容
1. HbA1cとは、赤血球に結びついたブドウ糖の割合
血液中の赤血球には、酸素を運ぶヘモグロビン(Hb)というタンパク質があります。血液中のブドウ糖の一部は、このヘモグロビンと結びつきます。結びついたものをグリコヘモグロビンと呼び、そのうち特定の型のものをHbA1c(ヘモグロビン・エー・ワン・シー)といいます。
HbA1cは、ヘモグロビン全体のうちHbA1cが占める割合を「%」で表します。血液中のブドウ糖が多い状態が続けば、結びつく量も増えるため、HbA1cの値は高くなります。
赤血球の寿命は約120日です。そのため、HbA1cは過去1〜2か月ほどの血糖の状態を反映すると考えられています。前日の食事や、採血直前の食事だけで大きく変わる数値ではありません。
2. 血糖値との違い ── 「点」と「平均」
健診では、血糖値とHbA1cの両方を測ることが多くあります。この2つは、見ているものが違います。
血糖値は「採血したその瞬間」の値です。食事の内容や時間、体調によって大きく上下します。一方HbA1cは、その期間の血糖の「平均的な高さ」に近い指標です。
つまり、HbA1cは日々の血糖の高低をならしたものです。だからこそ、この2つを組み合わせて確認します。血糖値だけでは「たまたま高い日だったのか」が分かりませんし、HbA1cだけでは「1日のなかでどう動いているのか」が分かりません。
3. 基準値と、糖尿病の診断基準
HbA1cには、目的の異なる複数の「線」があります。混同されやすいので、順に整理します。
健診の判定に使われる値
出典:厚生労働省「標準的な健診・保健指導プログラム」における健診判定値。
参考:厚生労働省 標準的な健診・保健指導プログラム
糖尿病の診断で使われる値
日本糖尿病学会の診断基準では、HbA1c 6.5%以上を「糖尿病型」としています。ただし、HbA1cが6.5%以上だからといって、それだけで糖尿病と確定するわけではありません。
診断には、血糖値の基準もあわせて確認します
早朝空腹時血糖値 126mg/dL 以上
75g経口ブドウ糖負荷試験 2時間値 200mg/dL 以上
随時血糖値 200mg/dL 以上
HbA1c 6.5%以上
これらのうち、血糖値の基準とHbA1cの基準が同じ日の検査で同時に確認された場合は、1回の検査で糖尿病と診断されます。血糖値の基準だけ、あるいはHbA1cだけが該当する場合は、別の日に再検査を行って判断します。HbA1cのみが2回確認されても、それだけでは診断は確定しません。
出典:日本糖尿病学会「糖尿病診療ガイドライン」および糖尿病の分類と診断基準。
参考:一般社団法人 日本糖尿病学会/国立国際医療研究センター 糖尿病情報センター
4. 治療で目指す値は、一律ではありません
「HbA1cは低ければ低いほどよい」というものではありません。日本糖尿病学会は、血糖コントロールの目標を目的別に3段階で示しています。
出典:日本糖尿病学会「血糖コントロール目標」(熊本宣言2013に基づく区分)。
参考:一般社団法人 日本糖尿病学会
高齢の方では、下げすぎないための「下限」も設けられています
65歳以上の方については、日本糖尿病学会と日本老年医学会の合同委員会が「高齢者糖尿病の血糖コントロール目標」を示しています。年齢、認知機能、日常生活動作(ADL)、併存疾患などによって目標値が異なります。
重症低血糖が起こりやすい薬(インスリン、SU薬、グリニド薬など)を使用している場合には、目標値に下限が設けられています。低血糖そのものが、転倒や認知機能への影響につながるためです。
出典:日本糖尿病学会・日本老年医学会 合同委員会「高齢者糖尿病の血糖コントロール目標(HbA1c値)」。
参考:一般社団法人 日本老年医学会
5. HbA1cだけでは分からないこと
HbA1cは平均に近い指標です。そのため、次のようなことは読み取れません。
こうした「動き」を確認する方法として、自己血糖測定や持続グルコース測定(CGM)があります。HbA1cが目標の範囲にあっても、血糖の動き方によっては治療の見直しを検討することがあります。
6. HbA1cが正しく評価できない場合
HbA1cは赤血球の状態に影響されるため、次のような場合には実際の血糖状態とずれることがあります。
このような場合には、グリコアルブミンや1,5-AGなど、HbA1c以外の指標を用いて評価することがあります。貧血の治療中、透析中、妊娠中の方は、その旨を必ず診察時にお伝えください。
7. 指摘されたときに、まずすること
健診でHbA1cを指摘されたとき、最初にすることは「食事を我慢すること」ではありません。いまの状態を確認することです。
当院では、血糖値とHbA1cを院内で測定し、その日の診察で結果をご説明しています。健診結果をお持ちいただければ、これまでの変化とあわせて確認できます。
→ 健診で血糖値・HbA1cを指摘された方へ(詳しいご案内)
この記事についてのご注意
本記事は一般的な情報提供を目的としており、個々の患者さんの診断や治療方針を示すものではありません。記載している基準値や目標値は、年齢、併存疾患、使用しているお薬などによって異なります。ご自身の治療については、必ず主治医にご相談ください。また、記事の内容をもとにお薬の量を変更したり、中止したりしないでください。
参考資料
一般社団法人 日本糖尿病学会「糖尿病診療ガイドライン」/糖尿病の分類と診断基準 www.jds.or.jp
日本糖尿病学会・日本老年医学会 合同委員会「高齢者糖尿病の血糖コントロール目標」 www.jpn-geriat-soc.or.jp
厚生労働省「標準的な健診・保健指導プログラム」 kennshin.mhlw.go.jp
国立国際医療研究センター 糖尿病情報センター dmic.ncgm.go.jp
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監修
森山 純江 ローズタウン糖尿病内科 院長
日本内科学会 認定内科医/日本内科学会 総合内科専門医/日本糖尿病学会 専門医/日本リウマチ学会 専門医/日本医師会認定産業医
公開日 2026年8月 | 最終更新 2026年8月